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深草の野辺の桜し心あらば ことしばかりは墨染めに咲け
                                          (古今集 上野岑雄)



 萬年さんがいなくなった時、北の街の桜には、まだ一月の間があった。三月の終わり。
 もちろん、その一月後、咲いた桜も墨染めに色褪せてなどいなかった。いつもと変わらない薄桃色の花は、けれども確かに、どこか褪せて見えたように思う。そしてそれからずっと、僕たちは、萬年さんのいない春と夏と秋と冬を、生きている。

 僕たちの幾人かは、春の日、桜にはまだ早い四月の北海道大学で、萬年さんに出会った。劇団アトリヱの脚本・演出家として。そしてまた幾人かは、その後に結成された百貨劇場、デパートメントシアター・アレフの主宰として萬年さんを知った。
 それから、ある者は役者として、ある者はスタッフとして、ある者は観客として、萬年さんを核として創られる芝居に関わり、笑ったり怒鳴ったりヘコんだり泣いたり困ったり徹夜したり汗だくになったり飯を食ったりバカな話をしたり、そしてまた笑ったりした。僕たちはみんな、萬年さんのことが、好きだった。

 あの頃のことを、もう萬年さんと語ることは出来ないけれど、想い出を形にすることはできるかもしれない。それが、同じ日々を少しでも過ごした人たちに、ひとときでも思い出してもらうきっかけになるかもしれない。僕たちは、そう考えた。

 ……つまり、このサイトは、そういうサイトです。

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